「学びとキャリアの交差点 職業教育編」、いよいよ最終回です。今回はこれまでの議論を総括しながら、職業教育をどう実現していけばいいのか、自由なディスカッション形式でお届けします。正解のない問いだからこそ、一緒に考えてみませんか。
そもそもキャリア教育と職業教育の違いとは?
「これは職業教育?それともキャリア教育?」と迷う場面は意外と多いものです。まずは2つの違いを整理しながら、日本の実態を見ていきましょう。
日本の学校でやっているのは「キャリア教育」が中心
キャリア教育(自分の進む方向を考え、力を身につける教育)は学校でも取り組まれています。一方で、職業準備教育(実際に職業に就くための訓練)は、50年前と比べて半分の割合にまで減ってきているのが現状です。
- キャリア教育:自分の方向性を決め、自分を発揮する力を育てる
- 職業教育:特定の仕事に就くための具体的なスキルを身につける
聞いていると、日本の学校ではキャリア教育に寄っていて、職業準備教育の段階まではなかなか到達していない、という印象があります。
職業教育は「学校」と「企業」のどちらでやるべき?
では、職業教育は学校でどこまでやるべきなのでしょうか。ここは意見が分かれる難しいテーマです。
学校で全部やるのは難しいという現実
日本の高校は普通科(特定の専門に特化しない学科)が大半を占めます。普通科からの進路は実に幅広く、工業系、研究系、教育系、農業など多方面に分かれていきます。
- すべての進路をカバーしようとすると、教える内容が膨大になりすぎる
- 大学の教育学部ですら、小学校・中学校・高校・教材会社など進路はバラバラ
- これほど進路が多様な中で、学校が職業教育を担うのは現実的に困難
こうした理由から、「職業教育は企業の中で必要なスキルを伝える形が、今の日本の学校体系には合っている」という考え方も十分に説得力があります。
企業任せの「レールから外れる人」をどう救うか
ただし、企業に教育を任せる場合の懸念もあります。研修がしっかりした会社に入れた人はいいのですが、そうでない人は「レールから外れた」状態になりかねません。
新人教育の質が会社によって大きく異なれば、それだけ人材の差も広がってしまいます。だからこそ、レールに乗れなかった人を救い出す仕組みが、これからの社会には必要になりそうです。
カギを握るのは「専門学校」の立て直し
日本の職業教育を変えるうえで、最も可能性を秘めているのが専門学校かもしれません。一方で、いくつかの根深い課題も抱えています。
「勉強が苦手な人が行く場所」というイメージの問題
専門学校は職業に直結したスキルを学べる場ですが、「大学に行く学力がないから仕方なく行く」というイメージが定着してしまっています。
- 大学を出てから、職業に就くために専門学校で学び直したい人もいる
- しかし「えっ、専門学校行くの?」という空気が周囲にある
- 本来は学び直しの選択肢として、もっと自然に選べるべき
イギリスのように、大学を出てから職業のために専門学校へ進む流れがもっと当たり前になれば、選択肢はぐっと広がります。
学費と分野の偏りという構造的な課題
専門学校は約9割が私立で、学費の負担も小さくありません。
- 2年間とはいえ、学費は大学とそれほど変わらないケースも多い
- 「大学のお金がないから専門学校へ」という金銭的な受け皿にもなりきれていない
- 工業系・エンジニア系の専門学校が、アメリカなどに比べて極端に少ない
電気・電子系といった分野は特に弱いため、国がある程度補助をする「公立の専門学校」のような取り組みがあってもいいのではないでしょうか。
日本は「決定の先延ばし」をしすぎている?
進路選択を後回しにし続けた結果、最後は企業が決めている——そんな構造が見えてきます。自分で決める力は、どこで育つのでしょうか。
決定がどんどん後ろ倒しになる仕組み
普通科の良さは「あとから進路を選べる」ことですが、裏を返せば決定の先延ばしでもあります。
- 大学で学んだことと職業が必ずしも結びつかない
- 就活のときに改めて進路を考え直す
- 総合職(職種を限定しない採用)で入社し、配属は会社次第
営業と事務職では、人と話すかパソコンに向かうかで仕事内容がまるで違います。それでも「総合職」という枠組みのまま、自分で決めるタイミングがずるずると後ろにずれていくのです。
「失敗できる環境で選ぶ練習」が大切
だからこそ、教育の段階で失敗できる状態を作り、選ぶ練習をすることが大切だと考えます。何かを決めて訓練を重ねないと、できるようにはなりません。これは仕事も同じです。
インターンと職業体験を、もっと早い段階で
近年、日本でもインターンが増えてきました。これは職業教育にとってポジティブな変化ですが、実態には注意も必要です。
「囲い込み」ではなく「訓練」としてのインターンへ
日本でインターンが増えた背景には、新卒学生の早期囲い込みという事情があります。
- インターン参加が早期選考につながる、という使われ方が多い
- 「できなくても粘り強く訓練する」という職業訓練の文脈は少ない
- それでも、職業を経験する機会が広まったこと自体は大きな前進
本来は大学生だけでなく、高校生がアルバイト感覚でインターンを経験してもいいはずです。パソコンさえあればできる仕事も増えている今、職業体験の機会はもっと増やしていけるはずです。
高校でやってみたい「職業の全体像」を知る授業
もし高校で自由に授業ができるなら、ぜひやってみたいのが「職業の全体像」を把握する教育です。これは職業教育とキャリア教育のちょうど境目にある取り組みかもしれません。
全体像を知れば、興味で深掘りできる
「興味のある職業を調べてごらん」と言われても、細分化されすぎていて、たどり着けない仕事がたくさんあります。
- 「メーカーの生産管理」を最初から調べようとする人はまずいない
- でも「メーカーはどんな仕事をしているか」から見ていくと、必要な職種が見えてくる
- 「こういう仕事をする人が必要だよね」とたどると、知らなかった職業に出会える
まず社会全体の地図を渡してあげる。そこから、それぞれの興味に応じて各論を深掘りしていく。こうした流れこそ、これからの教育に必要なのではないでしょうか。
「社会で役立つ」視点をもっと前面に
キャリア教育は方向性を決めることに重きを置きがちですが、ビジネス書的な「知っておくとすぐ役立つ知識」も世の中にはたくさんあります。情報科やプログラミング教育が広がりつつある今こそ、「どの段階で何を学ぶか」をアップデートしながら、社会で役立つ視点をもっと取り入れていけるといいですね。
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