「個性を大切に」「個性を伸ばそう」——学校でもよく耳にする言葉ですが、そもそも個性とは何なのでしょうか。今回は「個性」をテーマに、その正体を3つの視点から紐解いていきます。教育やキャリアを考えるうえで、実はとても大切な問いなのです。
なぜ「個性」を考えるのか
今回のテーマは「個性」です。きっかけは、ある授業をクローズした経験でした。「自由に何でもやっていい環境を作れば、人は主体的に行動するのでは?」という仮説から始めた取り組みでしたが、どうやらそう単純ではなかったのです。
自由な環境を用意すると、「何もやらない」という選択肢も増えてしまいます。それも確かに自由ではありますが、では主体性とは、そして個性とは何なのか——そんな疑問が浮かび上がってきました。
「個性を伸ばす」への違和感
学校では「子どもの個性を尊重して伸ばそう」とよく言われます。しかし、ここには少し引っかかる点があります。
- 個性を「尊重する」のはわかる
- でも個性を「伸ばす」とはどういうことなのか
- そもそも個性はその人が持っているもので、伸ばさなくても個性は個性なのでは?
「個性を大切にする」というイメージはわかっても、「伸ばす」という言葉には少しモヤモヤが残ります。だからこそ、まずは個性そのものについてきちんと学ぶ必要があるのではないか——それが今回の出発点です。
「個性的」と聞いて思い浮かぶイメージ
「個性」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは「奇抜さ」かもしれません。しかし、それは本当に個性の本質なのでしょうか。まずは私たちが抱きがちなイメージから見ていきましょう。
たとえば、髪をピンクに染めて派手なアクセサリーを身につけ、SNSで踊っているインフルエンサー。ああいった「奇抜な人」を、私たちはつい「個性的」と呼びがちです。
でも、ここで一度立ち止まって考えてみたいのです。「個性を伸ばす」「個性を尊重する教育」といった言葉には、注意が必要な側面もあります。というのも、「個性」を拡大解釈しすぎると、次のような問題が起こりかねないからです。
- 授業中に座っていない子も「それも個性だよね」
- 授業中にご飯を食べている子も「それも個性だよね」
もちろん今の時代にそんな極端なことはありませんが、拡大解釈が続けばそうなってしまう危うさもあります。教育の現場では、教えるべきこと、身につけるべき社会規律(社会で共に生きるためのルール)と、個性の尊重とのバランスをどう取るかが問われるのです。
個性を読み解く3つの視点
ここからが本題です。さまざまな本を読むなかで見えてきたのは、個性は「ばらつき」「関係性」「設計」という3つの視点から説明できるということでした。それぞれを簡単に見ていきましょう。
① ばらつき — 得意も不得意もギザギザ
個性というと、その人に固定された固有のものというイメージがあります。でも実際は、得意も不得意も混ざり合った「ギザギザのばらつき」なのです。
たとえば、こんな人がいます。
- 数学は苦手だけど、話をまとめるのは得意
- 人前での発表は苦手だけど、一対一の相談はとても上手
後者の人を「コミュニケーション力がある」と評価すべきか、悩ましいところです。「コミ力」というくくりが大きすぎるのかもしれません。大切なのは、個性はこうしたばらつきそのものであり、平均に「ならして」しまうと消えてしまうということです。
② 関係性 — 相手や場面で変わるもの
同じ人でも、友達の前と先生の前では、話し方も表情も変わります。個性は、人とのやりとりのなかで立ち上がるものでもあるのです。
わかりやすいのが「三者面談問題」です。三者面談が苦手だった人は多いのではないでしょうか。その理由は、こう説明できます。
- 「学校での自分」と「家での自分」がある
- 三者面談では、その2つが一つに混ざってしまう
- どちらのキャラで行けばいいのか、ブレが生じて落ち着かない
授業参観も同じです。いつもは大人しい子がやたらとはしゃいだり、逆にいつもおしゃべりな子が静かになったり。これは、家の人・先生・友達という「複数の世界」が一度に混ざることで、いわば混乱(バグ)が起きているのです。
つまり個性は、関係性や場の環境によって変わるものだと言えます。
③ 設計 — 場のルールが個性を作る
3つ目は「設計」です。教室や会社のルール、評価の仕方といった「場の設計」によって、個性は作り上げられていく側面があります。
「こういう行動がいい」「こういう人が評価される」というルールがあれば、人はそれに合わせていきます。場の設計が変われば、同じ人でも力を出せたり出せなかったりするのです。
これは歴史を振り返るとよくわかります。学校教育で評価される観点も時代とともに変わってきました。だからこそ、「何が個性的か」も時代によって移り変わっていくのです。
「個性がなきゃダメ」という圧力
個性は時代や場によって変わる、いわば流動的なもの。それなのに現代では「個性がなければダメ」という空気が強まっています。私たちの身近なところにも、その圧力は忍び寄っています。
たとえば就職活動では、「あなたはどんな人ですか」を明確に語れないといけない、という圧力があります。しかし、先ほどの3つの視点に立てば、個性はそんなに固定的なものではありません。
- 髪をピンクに染めた人も、200年後にそれが当たり前になれば「個性的」とは言われないかもしれない
- 先駆的ではあっても、個性の捉え方は時代で変わる
「ばらつき」「関係性」「設計」——この3つの視点で紐解いていくと、個性とは何かが少しずつ見えてきます。個性は一つに固定されたものではなく、状況や環境のなかで揺れ動くもの。そう捉えることで、無用なプレッシャーからも少し自由になれるのではないでしょうか。
次回は「個性はどう生まれるのか」という観点から、さらに深く掘り下げていきます。お楽しみに。
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